大阪府能勢町の野外活動施設「豊中市立青少年自然の家わっぱる」には哺乳類から植物や菌類まで、実に様々な生きものが棲んでいます。 しかも、その一つ一つを観察していくと、それぞれが生きていくために複雑に繋がり合い、森をつくっていることがわかってきます。ここでは、その小さな一つ一つの命を紹介しようと思います。

2019年1月29日火曜日

シロハラ


冬のわっぱるを歩いていると、ガサガサ、ガサガサ、と音が聞こえてくることがあります。そんなときは、地面を注意してみてみましょう。
舞い上がる落ち葉の中に、写真の鳥がいるはずです。

名前を「シロハラ」といいます。ヒタキ科の鳥で、冬になると日本へ渡ってきます。
大きさはヒヨドリくらいでしょうか。枝にとまっていると、そこそこ目立つ大きさです。雌雄同色の鳥ですが、雌の方が頭の色が薄く、細い眉斑(まゆげのような模様のこと)があることから、見分けることができます。ちなみに、写真の個体は男の子。雌の写真は残念ながら無いので、気になる方は検索して見比べてみてください。

地面の落ち葉を、やや大げさな動きでひっくり返しながら、餌を探します。
「ガサガサ」の正体は、シロハラのお食事タイム。急に接近したりせず、遠くから見守ってあげてくださいね。



2019年1月27日日曜日

オオユミアシゴミムシダマシ

コナラの薪割りをしていたら、中から出てきました。越冬成虫です。それにしても長い名前ですね。前脚の一部が湾曲した大き目のゴミムシダマシのなかま、といった意味でしょうか。「ゴミムシダマシ」というのは「ゴミムシに似てるがゴミムシではない」といった意味ですが性格はずいぶん違います。ゴミムシはオサムシ科のグループで、基本的に肉食で、動きも素早く、獰猛な感じです。一方、ゴミムシダマシの多くは朽木やキノコ食で動きもゆったりとしていておおらかな気性といった感じで、哺乳類でいえば、ヒョウとナマケモノほど違います。(あくまで個人的な感想)噛み付くこともないので、比較的親しみやすい虫です。「ゴミムシ」にしても「ゴミムシダマシ」にしても虫たちに申し訳ないようなネーミングですね。大きさ27ミリ。1月26日撮影。(De)

ササユリ

Q:豊中市の「市の花」は「バラ」です。では、「わっぱる」がある能勢町の「町の花」は何でしょう?

「わっぱる」の館内クイズラリー「能勢のせ検定」の問題の1つですが、答えは「ササユリ」です。わっぱるでも、6月の梅雨ごろに毎年花を咲かせてくれます。





茎や葉が「ササ」に似ていることからこの名前。森の下草の中からピョコンと顔を出して花を咲かせている姿は、この時期の山での楽しみです。

2019年1月18日金曜日

タニウツギ

「花の季節」と言えば春をイメージされるかも知れませんが、梅雨時の6月~7月にかけても案外と色々な花が咲きます。タニウツギもそんな中の一つです。





樹高はせいぜい2~3メートル程度。普段はあまり目立たない低木ですが、花期になるとここぞとばかりにピンクの花を咲かせます。小さいピンクの花が、房状に集まりながらいくつも咲いている姿は、梅雨時の緑色の山中でひと際映えます。

雨がちな季節を楽しくしてくれる花の一つです。

2019年1月17日木曜日

スッポンタケ

世の生きものには、できるだけ慈愛の心を持って接したいと思っている私ですが、それが難しい場合もしばしばあります。

わっぱるの森を夏から秋にかけて歩いていると、ふと、腐った肉のような悪臭がすることがあります。その時には、結構な確率でこのキノコが近くに生えています。(ちなみに、本当に動物が死んでいる場合もあります)



臭いも悪いですが、ぬめりのあるその姿も何とも気味が悪い。
その臭いに引き寄せられるのか、ハエがたかっていることも多く、衛生的にも悪そう(ハエが胞子を運んでくれるようです)。そのくせ、食用にもなるというから始末が悪い。

悪い尽くしが一周まわって、見つけると何とも言えない気分の高揚を覚える、そんな不思議なきのこです。(Hu)

2019年1月16日水曜日

ツチアケビ

別名「森のソーセージ」。



わっぱる林の中を歩いていると、たまに毒々しい赤色の房が生えておりぎょっとさせられます。茎の高さは大きいもので50cm程度でしょうか?
「ツチアケビ」の名前の通り、どことなく「アケビ」に似ています。ただ、臭みと苦みで食べるのは難しいようです。私も食べたことはありません。(漢方薬にはなっている模様)。

ランの仲間で、花はこんな感じ。


光合成を行いません。どうもキノコの「ナラタケ」の菌と一緒に生活し、菌が作り出す栄養を貰っているようです。(Hu)

ホソミオツネントンボ


一昨年の12月に撮影されたもので、ホソミオツネントンボの越冬個体です。成虫で越冬するトンボは多くなく、オツネントンボ、ホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボの3種のみとされています。「オツネン」とは「越年」のことで、全体に褐色の目立たない色合いで小枝の風体でじっとしています。春になると褐色の部分が鮮やかなライトブルーになります。寒い冬をじっと耐え忍んでいる姿がいじらしいですね。アオイトトンボ科。(De)

2019年1月14日月曜日

ネムノキ

わっぱるには「ねむの里」というテントサイトがあります。
これはネムノキという落葉樹の名前から来ています。ネムノキは、6月から7月にかけて、綺麗でちょっと変わった花を咲かせます。





薄紅色の広がった部分は「おしべ」だそうです。木は大きいもので10m程度。大きな木に一斉に花を咲かせる様子は見ごたえがあります。
ちなみに漢字で書くと「合歓木」。中国で、夫婦円満の象徴とされているところから付けられたとか。よろこびあう木、良い名前ですよね。

わっぱる場内にもありますが、わっぱるに向かう道にも多数生えており、出勤時にこの花が見られるようになると、夏の繁忙期が始まるなあ、と身が引き締まる気持ちになります。(Hu)

2019年1月13日日曜日

センブリ

秋ごろになると、キャンプ場内の日当たりの良い道端に見ることができます。草丈は10~20cm程度でしょうか。


















紫の筋がある白色の可愛い花が目印。よく昆虫も集まっています。














昔から胃を健康に保つ薬として活用されてきました。葉っぱには強い苦みがあります。
「千回身震いするほど苦い草」「お湯の中に千回振り出しても苦みが残る」からセンブリと名付けられた、という説もあります。
名前負けしていない苦さだと個人的には思います。興味のある方は、場内で見つけた時に葉っぱを一枚いただいてぜひ口に含んでみてください。悶絶間違いなしです。(Hu)

ヤブコウジ

びっしりと落ち葉が積もった真冬の森の中、ひときわ目に付く赤い実があります。ヤブコウジです。別名、十両とも言われ、千両や万両、百両(カラタチバナ)とともに縁起物とされ、お正月の寄せ植えに使われることも多いので馴染みのある植物ですね。樹高は10cmー20cmと低く、ほとんど落ち葉に埋もれてしまってたりします。寒い森の中でこんなに小さな木が赤い実をつけているのを見つけると少し嬉しくなりますね。(本日撮影)
(De)

2019年1月12日土曜日

ドンコ

わっぱる前を流れる「大路次川」の生きものの中でもひときわ愛嬌あふれる魚です。



厚い唇と突き出た下あご、つぶらな眼、そして「腕立て伏せ」のようにヒレで上体を少し持ち上げた姿がラブリー。



岩の下が棲み処。岩をひっくり返しながらアミでガサガサとするとよく採れます。
大きいものでは15cmを超えるものも。

動物食で、小魚や水生昆虫などを捕食。食欲旺盛で、動くものなら自分と同じくらいの大きさのものでも食いつきます。水槽で飼育する時は、一緒に小魚などを入れないように注意。夜な夜な、小魚の数が減っていくのです。(Hu)

トゲグモ♀

まるで未確認飛行物体。わっぱるにUFO現る、といいたいところですが、大きさ7-8ミリのクモです。背中の棘は固く、これで身を守っていると思われます。木と木の間に完全な円形状に網を張り、昆虫などの獲物を捕らえます。コガネグモ科(2018/9/27撮影)
(De)

2019年1月11日金曜日

アセビ

アセビはわっぱるではヒサカキの次くらいにありふれた常緑樹です。
樹高は高くありません。高いものでもせいぜい3m程度でしょうか。少しねじれた感じの幹と、楕円形の葉が特徴です。
毒がある植物でもあります。アセビを「馬酔木」と書くことがあります。葉っぱを食べた馬が、毒にあたって酔ったようにふらつくところから名付けられたとか。





2月~3月頃につぼ状の花が房となり垂れ下がります。ウメやサクラより少し早く、わっぱるの早春を告げてくれます。
ウメ、モモ、サクラなど、強豪ぞろいの春の花に比べると地味ですが、それでも寒さの残る山を彩ってくれます。

ところで、万葉集にもアセビを読んだ歌がたくさんあります。花が稲穂に似ているため、縁起が良かったからとも言われています。
この恋歌など、場内に咲くアセビの花を見ながらだと、年甲斐もなくキュンとしてしまいますね。↓

我が背子に 我が恋ふらくは 奥山の 馬酔木の花の 今盛りなり (作者不明)

(あなたのことを恋しいと思っている私の心は、まるで奥山に咲く馬酔木の花のように、密かに秘められて、でも溢れんばかりです) (Hu)

2019年1月10日木曜日

タマゴタケ


 このキノコは色、形が独特なので、とてもよく目立ちます。夏から秋にかけて、ブナ科やマツ科及びその混成林の林床に出現します。わっぱるの森にはアカマツ、コナラが多くありますので、わっぱるの環境を好むキノコといえますね。毒々しいイメージですが、食べることができ、美味とされています。同じ属のベニテングタケとよく似ていますがこちらは毒キノコなので気を付けましょう。(2018/12/16撮影)
(De)

はじまりはじまり

さあ、「わっぱる生きもの図鑑」のはじまりです。わっぱるは生きものの宝庫です。
今日から一つ一つ生きものの紹介をしていきます。
実際にわっぱるの敷地内でスタッフが撮影した画像を中心に掲載していきます。
種名や解説は複数の文献や資料などによりを可能な限り精査します。
しかし、専門家による学術的な監修をしていませんので、中には種名や生態などの解説について、誤りがある可能性があることに留意していただいてご覧いただければ幸いです。
                                   (De)