大阪府能勢町の野外活動施設「豊中市立青少年自然の家わっぱる」には哺乳類から植物や菌類まで、実に様々な生きものが棲んでいます。 しかも、その一つ一つを観察していくと、それぞれが生きていくために複雑に繋がり合い、森をつくっていることがわかってきます。ここでは、その小さな一つ一つの命を紹介しようと思います。

2019年8月28日水曜日

ヤママユ

ヤママユ♀
ヤママユは大型のガのなかまで、翅を広げた大きさは115~150㎜です。幼虫はコナラ、クヌギ、クリなどの葉を食べて育ちます。年一回の発生で、8~10月とされていますが上の画像は8月24日に管理棟の裏の壁面にとまっていたものです。全く同じ場所で昨年は8月23日に撮影されています。
昨年撮影のヤママユ(♀)
昨年の個体は全体に赤みがかった色合いですが、翅の模様・色合いの個体差が大きいこともこのガの特徴です。
 また、繭からとれる糸は天蚕糸(てんさんし)といい、高級な絹糸として長野県のある地域では昔から飼われ、ヤママユの養蚕が行われてきました。
明治以降、製糸が国策で行われるようになってから、皇居の一角に蚕室が設けられ、代々皇后による養蚕が行われるようになっていますが、現在は在来種の蚕と併せてヤママユによる養蚕も行われ、そのためのクヌギも植えられています。
ヤママユは日本の固有種ですが天蚕糸の生産のため、輸出もされています。
ヤママユ♀の胴体部分。「このモフモフ感がたまらなく可愛い」という人も少なくないんですよ。(De)

2019年8月23日金曜日

ルリボシカミキリ

ルリボシカミキリです。大きさ14~30㎜ほどの中型のカミキリムシですが、色が鮮やかなブルーでとても目を引き、虫好きにとっては大変人気のあるカミキリムシでもあります。7月末から8月に現れます。幼虫はコナラなど各種広葉樹の倒木や伐採木で3年ほどかけて育ち、成虫は花粉や樹液を食します。日本の固有種で各地にいますが生息地は限られているようで、大阪府レッドデータでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。わっぱるの森は広葉樹が多く、また、倒木・伐採木もあるので、この虫の生息環境に合致しているのかも知れません。このルリボシカミキリが飛んでいるのを目にすると森全体が一層美しいものに思えてきます。(De)

2019年8月20日火曜日

木の命と水害

昨年の夏、大雨のため、大路次川河畔の林は激流にさらされました。
そのため、それまで土だったところがえぐられて、土が流れ、そこに生えていたカキノキの根っこがむき出しになりました。
穴ぼこの右側にある木です。
それでも、がんばって生えていましたが、今年になってついに大きく傾いて川への入り口を塞いでしまいました。しかたなく、伐採しました。伐採した木は積んで土に還したり、クラフトの材料にしたり、乾かして薪にしたりします。
この木がここに生きた証として伐った材を削って、何本かスプーンをつくりました。
ところが、最近、気がつくと、土の中に残っていた根からいくつもの芽がでていたのです。
カキノキの復活です。
多くの広葉樹は切り株から萌芽する生命力があります。
根っこだけからこんなに萌芽更新するとは驚きです。
木はいつ死ぬのでしょうね?(De)

2019年8月11日日曜日

ヒラタクワガタ♂

やや平たい大型のがっしりとした体型のクワガタムシで、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタとともに日本の代表的なクワガタムシです。本州・四国・九州に生息しますが、西南日本に多い傾向があります。また、朝鮮半島から東南アジアにかけて多くの亜種が存在し、交雑による遺伝子汚染が懸念されている種でもあります。大きさは19~81㎜(オス)と個体により幅があり、小さいほど背中の光沢が増す傾向があります。幼虫はクヌギ・コナラなどの広葉樹の朽木や倒木で育ちます。一年あまりをかけて羽化し成虫になります。そしてこの種は成虫で越冬をします。(De)

2019年8月10日土曜日

ホシウスバカゲロウ

わっぱるの建物の中にしばしば昆虫たちが迷い込み、弱ったり、死んでしまったりして外に出られなくなった個体を目にすることがあります。これは意図的ではないのですが、自然に建物がトラップになってしまうのです。しかし、このことは、わっぱるにどんな生き物が住んでいるのかを観察する絶好の機会でもあるのです。
 今日、紹介するのはアミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科のホシウスバカゲロウです。「カゲロウ」と名前についていますが、幼虫が水生の「カワカゲロウ」はカゲロウ目でまた別のグループでこれはウスバカゲロウのなかまです。
 ウスバカゲロウといえば幼虫があの「アリジゴク」であることはよく知られています。
「アリジゴク」

しかし、ウスバカゲロウのなかまの幼虫が全てあのすり鉢状のトラップを作るわけではありません。詳しい生態はよくわからないのですが、このホシウスバケゲロウはすり鉢状のトラップをつくらず、土の中に体の大部分を隠して、近づく獲物を直接捕食しているようです。幼虫は悪役っぽい風貌ですが、成虫は天使のような優雅さですね。(De)

2019年8月6日火曜日

カブトムシ♂

カブトムシ♂とカナブンたち
クワガタとならんで人気者のカブトムシです。オスには頭部に大きな角、胸部に小さな角があります。樹液に集まり、同じく樹液を好む他の虫たちを角を使って豪快にほうり投げていい場所を占有します。その勇姿から「虫の王様」と呼ばれ、子どもたちの注目を集めている虫です。大きさは32~53mmですが、大きいものは80ミリに達するものもいます。幼虫は朽木ではなく、腐葉土の土の中で育ちます。孵化後、2回脱皮をし、3零幼虫になり越冬します。翌年、夏前には蛹になり、夜間の気温が20度を超えるころに羽化します。カブトムシは真夏のこの時期に交尾、産卵をし、野性のカブトムシたちは本格的な秋を迎えることなく、死んでいくのです。(De)

2019年8月3日土曜日

ミヤマクワガタ♂

夏本番です。昆虫たちの活動が最も活発な時期で、子どもたちが夢中になる虫たちが登場しています。その一つ、ミヤマクワガタです。
1~2年の幼虫期を経て蛹から羽化します。成虫はコナラ、クヌギなどの樹液に集まり、灯火に来ることもあります。大きさには幅があり、オスでは30~79㎜で画像のものは大きい方です。オスもメスも脚の付け根部分(腿節)に黄色い長楕円形の模様があります。大型のオスは頭部に耳の形の突起があり、これが男性的(?)なかっこ良さを際立たせていると思います。また、オスの体の表面には黄褐色の細かい毛が密生していて、光線によっては金色に輝いて、一層、雄雄しく見せます。けれども、野外で生きる個体は冬を越すことはないのです。(De)