大阪府能勢町の野外活動施設「豊中市立青少年自然の家わっぱる」には哺乳類から植物や菌類まで、実に様々な生きものが棲んでいます。 しかも、その一つ一つを観察していくと、それぞれが生きていくために複雑に繋がり合い、森をつくっていることがわかってきます。ここでは、その小さな一つ一つの命を紹介しようと思います。

2019年5月29日水曜日

ムカシヤンマ

やや大型の見慣れないトンボを撮りました。
調べてみたところ、「ムカシヤンマ」です。水の滴り落ちる谷筋の苔の生えた斜面に産卵し、幼虫はその斜面にトンネルを掘って生活し、2~3年かけて成虫になると推測されています。生息地は千葉県を除く本州・九州本島ですが比較的自然度の高い環境を好むこともあり、個体数は少なく、大阪府のレッドデータで「準絶滅危惧種」となっています。わっぱるの自然度の高さを示す生きものの一つと考えていいと思います。(De)

2019年5月28日火曜日

テングチョウ

わっぱるの水遊び場の近くに3本のエノキの若木があります。その葉の裏側にさなぎを見つけました。
テングチョウです。色が変わってきているので、近々羽化すると思われます。3月に撮った成虫の画像です。
口のあたりが突き出ているのがわかりますね。テングチョウはバルビとよばれる口の部位が発達していてその特徴から「テング」のついた和名になっています。また、このチョウは成虫で越冬し、春、暖かい日に真っ先に活動しはじめます。早春の陽だまりに現れるので春の訪れを告げるチョウでもあります。
また、このチョウはエノキで育ちます。エノキはこのチョウのほか、オオムラサキ、ゴマダラチョウ、ヒオドシチョウの食樹でもあり、ヤマトタマムシもこの木を好むなど、多くの昆虫たちが集まる木でもあります。虫だけでなく、エノキの実は多くの鳥たちの好物でもあります。エノキは多くの生きものたちと繋がっています。わっぱるにもっとたくさんエノキがあればいいなと思います。(De)

2019年5月26日日曜日

エゴノキ

エゴノキの花が咲いています。下向きに開く純白の花は清楚さを感じさせます。
それにしても「エゴノキ」とは変わったネーミングのように思います。「エゴ」とは?
牧野植物図鑑によると果皮がのどを刺激してえごい(えぐい)から、とあります。また、別名として「セッケンノキ」、「ロクロギ」とも呼ばれ、若い実をつぶして石鹸の代用にしたり、粘りのある材質から和傘のろくろと言われる部材に用いられたりされ、日本人の暮らしとともにあった樹木であったことがうかがわれます。(De)

2019年5月25日土曜日

クロホシタマムシ

美しいタマムシが見つかりました。タマムシの代表格であるヤマトタマムシは大きさが普通25~40ミリなのに対し、このクロホシタマムシは10ミリ程度と小さいのですが美しさはひけをとらないほどで、緑色からオレンジ色にかけてのグラデーション風金属光沢は生唾ものです。ヤマトタマムシが盛夏に現れるのに対し、これは5月ころからコナラ・クリなどが生える広葉樹林に現れますが、目にすることは少ないと感じます。近縁で非常によく似た種に「マスダクロホシタマムシ」というのがいますが、黒い星の配列が少し異なり、針葉樹林に現れます。
まるで森の宝石のようですね。(De)

2019年5月22日水曜日

ナラメリンゴフシ

コナラの新芽のところに赤いおいしそうな実のようなものが付いています。
しかし、これは実ではありません。「ナラメリンゴフシ」という虫こぶと呼ばれるものです。「ナラメリンゴタマバチ」という小型のハチのメスが芽のところに産卵します。幼虫から分泌される化学物質により、異常な成長をし、このようにリンゴのようにふくらみ、幼虫はその中で育ちます。この虫こぶを割って、中をのぞいてみましょう。
中心部に小さな幼虫がいますね。幼虫たちはこの実のような虫こぶを内側から食べて大きくなります。見事な作戦と感心するばかりですが、さらにこの育った幼虫に産卵管を刺して寄生するハチのなかまがいるといいますから驚きですね。(De)

2019年5月21日火曜日

オオセンチコガネ

ひときわ美しく輝くコガネムシの一種です。大きさは2センチほど。色彩も変異が多く、緑色に輝くもの、赤紫のもの、また、特に奈良地方のものは青く輝くものが多く、「ルリセンチコガネ」とも呼ばれます。しかし、その姿とは裏腹に生態は美しいと言えるものではありません。この虫の好物は獣糞や動物の死骸で、メスは獣糞に卵を産みつけ、幼虫は糞の中で育ちます。「センチ」とは「せっちん(雪隠)」で、昔のことばでトイレのことを指します。とはいえ、変化に富んだ美しさで私たちの目を楽しませてくれることに違いはありません。(De)

2019年5月12日日曜日

アワフキムシ

ノイバラの若い枝に泡が付いています。指ですくってみると、
何か動いているものがいます。









アワフキムシの一種シロオビアワフキの幼虫です。
アワフキムシのなかまは成虫・幼虫とも植物の茎から水分とそこに含まれるわずかな養分を吸って生きています。幼虫はその水分と自身の排泄物で石鹸状の液体をつくり泡にしてその中で暮らします。この液体は界面活性作用がありますのでほかの虫などが一旦この液体にまみれるとたちまち窒息してしまいます。この泡で自身を守っているというわけです。自分たちは尾の先がシュノーケル状になっているので先を泡の外に突き出して呼吸をします。また、吸い込んだ空気を尾を引っ込めてから吐き出し、液体を泡状にしていきます。
昆虫の生態は多様ですが身を守る方法もまた、実に多様なんですね。(De)


2019年5月11日土曜日

森のあかちゃんたち

冬の時期に常緑の低木を伐採し、林床(りんしょう)を明るくした場所があります。そこをのぞいてみると、今年、種から発芽した実生(みしょう)と呼ばれる、言わば木のあかちゃんたちの元気な姿を見ることができます。どんな木が芽生えているのかな?見てみましょう。
目立って多いのはこのウリカエデです。
この種(たね)は翼が一枚付いていて、くるくると回転しながら落ちてきます。




コナラです。ドングリから発芽します。






クロモジです。いい香りのする木です。






サルトリイバラです。とげがあるので「イバラ」となっていますが、関西では柏餅をくるむのにも使われます。また、ルリタテハの幼虫はこの葉で育ちます。




ヒノキです。植林されることの多い木ですが、雑木林にも孤立して生育していることもあります。





このように、たくさんの種類の木が芽生えていることがわかります。けれども、これらが全てちゃんと育つわけではありません。植物どうしの競争や病気などに戦って勝ち抜いたものだけが大きく育つことができるのです。多くの種類の樹木が育つ森は同時にまた多くの種類の生きものを育む森でもあるのです。(De)