大阪府能勢町の野外活動施設「豊中市立青少年自然の家わっぱる」には哺乳類から植物や菌類まで、実に様々な生きものが棲んでいます。 しかも、その一つ一つを観察していくと、それぞれが生きていくために複雑に繋がり合い、森をつくっていることがわかってきます。ここでは、その小さな一つ一つの命を紹介しようと思います。

2019年4月30日火曜日

ヤマタカマイマイ(旅立ち編)

わっぱるにすむカタツムリ、ヤマタカマイマイです。
昨年、3個体を飼育していたところ、9-10月にかけて産卵をしました。
何回かにわたって産卵されたので、3個体とも産んだものと思われます。カタツムリのなかまは雌雄同体なのでいずれの個体も産卵することができるのです。
大きさはちゃんと測らなかったのですが、2ミリくらいです。





孵化直後の赤ちゃんです。カタツムリはちゃんと殻をもった状態で生まれてくるので、はじめからカタツムリの形をしています。多くの昆虫がするような変態はしません。脱皮とかもしません。ただ、殻の巻きが少なく、自ら殻を外側に伸ばし、巻き数を増やしていく形で成長していくのです。


直近の子どもたちです。径7~8ミリに育ちました。






これから夏にかけては、施設の中はカタツムリにとって厳しい環境になるので、親子ともども山に帰すことにしたのです。





山は山で危険はあります。鳥などの蛋白源でもありますし、カタツムリが好物のオサムシのなかまも狙っています。みんなが全て無事に育つことはありません。でも、みんな達者で成長して欲しいと願わずにはおれません。
「元気で暮らすんだぞーーー!」(De)

2019年4月29日月曜日

わっぱるのサクラたち(その2)

わっぱるの森ではヤマザクラの花と入れ替わるようにカスミザクラの花が咲いています。

花はヤマザクラとよく似ています。
拡大してみると花柄に毛が目立ちます。
同じ場所にある両者は花期が異なりますのでこの時期は容易に区別することができます。また、解説書などでは山地の分布はヤマザクラより上部となっていますが、わっぱるでは混在しています。
 ウワミズザクラも咲きました。わっぱるのサクラのなかまではレアものです。
総(ふさ)状に花がつくので総状花序(そうじょうかじょ)といって、サクラのなかまでは特徴のある形です。実は熟すと食べられるとあるのでちょっと楽しみです。(De)

2019年4月27日土曜日

マルバアオダモ・ザイフリボク

マルバアオダモの花が咲いています。落葉樹のこの木は若葉が出るや否や一斉に花がつきました。

「まるば」の意味は葉の形ではなく、葉の縁が鋸歯縁(ギザギザ)ではなく全縁(つるっとしている)という意味でつけられています。また、この木の材は強くて反発力があり、以前は野球のバットやテニスのラケットに用いられていました。イチロー選手が好んで使い、メジャーリーグで年間最多安打の記録を作った年はアオダモ製のバットを使っていたことは有名です。しかし、良材のアオダモは採りつくされ、今はアオダモ製のバットは製造されていないようです。
 マルバアオダモの梢に紛れてひときわ白く輝く梢があります。
ザイフリボクです。別名「シデザクラ」とも言われています。
花弁がほっそりとしているのが特徴です。よく、庭などに植えられるジューンベリーは近縁種のアメリカザイフリボクのことでジューンベリーが6月に実が熟するのに対し、ザイフリボクは9~10月に熟します。花の季節には葉の季節にはわかりにくい木の個性が際立ちます。観察にはもってこいの季節です。(De)

2019年4月14日日曜日

ヤブツバキ

わっぱるの入り口付近、道路際にひときわたくさんの赤い花をつけた木があります。
ヤブツバキです。
5枚の大きな花弁の中心にたくさんのおしべがめだちます。庭や公園に植えられているいわゆる「つばき(椿)」はその多くが交配種でたくさんの種類があります。わっぱるに生えているヤブツバキは野生種で多くの園芸種のもとになっている原種でもあります。
また、この種子からとれる油は「椿油」として、化粧用や食用油などとして古くから日本人の暮らしかかせないものでした。日本人が大切にしてきた樹木の一つです。(De)

2019年4月12日金曜日

わっぱるのサクラたち

大阪北部の平野部ではサクラは散り始めているようです。わっぱるの入り口付近に植栽されているソメイヨシノは今、満開を迎えています。
森の中ではヤマザクラが咲き始めています。
ヤマザクラは若葉が出るのと同時に花が咲くのが特徴で、若葉はしばしば赤っぽい色をしています。また、花の付け根のがく筒や花柄にソメイヨシノは細い毛がはえているのに対し、ヤマザクラは無毛です。
ソメイヨシノのがく筒と花柄。がく筒は少しふっくらしていて毛が生えています。




ヤマザクラのがく筒は細くすっきりしていて無毛です。





ウワミズザクラというサクラもありますがまだつぼみです。
さらに、わっぱるにはカスミザクラというサクラもありますが、まだツボミは堅く、開花はさらに遅く、新緑のころになります。わっぱるのサクラの季節はこれからなのです。(De)

2019年4月5日金曜日

クロモジの花

新しい年度を迎え、ようやく春の暖かさを感じるようになりました。さあ、そうなると森の中も花が目立つようになってきます。
小さくてあまり目立ちませんがクロモジが花を付けています。クロモジはクスノキ科の落葉低木で、特有の強い芳香が好まれ、お茶席の和菓子に添えられている楊枝(ようじ)はこのクロモジで作られています。また、クロモジは雌雄異株(しゆういしゅ)で画像をよく見ると、花の中央部にひときわ長いめしべが目立ちますので雌花、すなわちこの株は雌株であることがわかります。仄かに淡い黄色の花びらは早春の清清しさを感じさせてくれます。(De)